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ここに生命保険の「解約」をしようとする田中さんという人がいたとします。

私だったら「田中さ~ん、ちょっと、待って!」と言うでしょう。「その解約、待った!」と声を掛けたくなるのです。

なぜなら、生命保険の解約は「解約損」が生まれるからです。

ある時、新宿にある税理士事務所へ訪ねて行きました。私は税理士さんのお客様が結構いたのです。そこの事務所には中堅どころの男性のO税理士さんがいらして、「僕は、M生命に保険を20年掛けているんですよね。でも、決して解約はしませんよ。だって、保険の解約は必ず解約損が生まれるからね。損はしたくないからね。」と言われたのです。さすが、税理士さんだな、と感心したものです。解約損?私は聞きなれないこの言葉を彼から教えてもらったのでした。さて、「解約損」とは何でしょうか。

ここで、まず、生命保険と損害保険の解約の違いを考えてみましょう。

例えば、損害保険である自動車保険について考えてみます。

自動車保険は、無事故であれば、毎年等級が上がって行きますね。(Maxはありますが)この等級はA社からB社へ乗り換えても、通常この等級はB社で引き継がれるものです。各社、見積もりの金額がまちまちでもです。顧客にとっては保険会社を変えても損は生まれないでしょう。(ただし、事故履歴のある場合等では、お引き受けしない保険会社もあるかと思いますので事前に確認されることをお勧めします。)

何故でしょう?それは、事故の保障だからです。事故は突発的なものですね。ですから、その性質上会社を変えても引き継がれるのかと思います。

では、「生命保険」の解約はどんなものでしょうか。実は、生命保険の解約は原則として慎重にした方が良いと私は個人的に思います。

なぜなら、事故は突発的なものですが、病気は、事故のように突発的なものではないからです。

生命保険の保障とは、つまり、身体に掛けるものなのです。人間の身体は、今は健康でも毎年、毎年、1歳ずつ年をとって行きます。それにつれて、細胞も古くなってくるでしょうし、免疫力も落ちて行くものです。病気になるリスクは年とともに上がって行くものです。そのため、C社を解約し、D社に加入しても、自動車保険のようには行きません。バッサリ、前の保険の保障は切られてしまうのです。そこでD社に加入することで、また、初めからスタートしなくてはなりません。”リスタート”です。せっかく長く続けてきたのに過去の実績はバッサリ!です。

一度、解約や減額をすると、残念ながら、もう元に戻すことはできません。(ただし、保険の種類によって減額の場合は、一定の条件をクリアーすれば、毎年見直しのできるタイプもあります。例えば、同じ保険で新しく特約を大きくしたり、小さくしたり、付け加えたり、外したりすることができるタイプです。ここは重要です。なぜなら、社会も経済環境も家庭環境も変化して行きますし、何よりも人の気持ちは変わることがあるからです。)

私自身も50代半ばで乳がんになりました。私は、がんになるなんて夢にも思っていませんでしたし、会社の健康診断は毎年受けてきましたので、まさかと思いました。乳がんは、がんの中でも10年過ぎても再発のあるがんです。乳がんについてはゆっくりお話しできる時に書かせて頂きます。さて、がんになった後に生命保険に加入することはできるのでしょうか。通常は難しくなります。ただし、一定の期間後、できる場合もあります。例えば10年経てば新しい保険に加入できるとか、また、簡単な告知の保険もあり、「5年以内にがんになっていない」等と健康告知がゆるくなって加入できる保険も出てきました。それでも、新しい生命保険の加入には通常は、健康告知が付いてくるのです。(保険の種類によって職業告知のみの保険もあります。)ここの部分は約款を良く読まれることをお勧め致します。

私のお客様で若い男性で大学のパート職員さんがいました。彼はもともとお母さんが彼がまだ子供の頃から彼を保険に加入させていたのです。私は、彼の保険をコンバージョン、新しい保険へと転換を勧めたのです。保険料はあまり変わらず、彼は加入されました。

それから1年半が過ぎた時、彼が入院したとの電話を頂きました。この方の場合は、1年半前の新しい保険に加入される前に、今回入院した同じ病気でこの病院に通院されていたことが、診断書に書かれていたのかと思います。その時の診断書には初診はいついつと書かれる欄があって、ドクターは書かれたのでしょう。結局、この新しい保険は2年経っていなかったため、解除になってしまいました。でも、ラッキーだったのは、この新しい保険はだめになりましたが、その前に加入されていた保険に戻してくれたのです。「ああ、良かった!」と思いました。なぜなら、新しい保険になっても、彼には昔から加入していた保険の「既得権」があったのです。無事、入院の給付金は出たのです。「生命保険は簡単に解約をしない方が良い!長く、大切に」というのはこうした私の経験があるからです。

この長く掛けてきた大切な既得権を切ってしまうのが解約です。ちなみに彼は、病気の性質上か、申し込み時、ご本人は告知をされなかったのです。私も寝耳に水で、彼の病院へお見舞いへ行って初めて彼の口から聞いたのでした。そうだったのか、と。

解約は損というのは、決して金額的なことばかりではないのです。ただ、人生は色々、どうしても解約をしなければならない時もありますよね。その時以外は、私は解約はしない方が良いなと感じています。

そして、もう一つ付け加えておきます。事故と病気の起きる割合です。通常、保険料では、事故、災害での入院や死亡保険は安いです。でも、病気での入院や死亡保険は高くなります。なぜならば、死亡率が異なるからです。「事故は少なく発生し、病気は多く発生する」ということを覚えておいて下さい。

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